紀元前3000年ころの古代エジプト初期から、香りは神聖なものであり薫香として神殿で焚かれました。また、王族が亡くなると、その亡骸に防腐・防臭目的でミルラ(没薬)などの樹脂がミイラに塗られていました。
香り・香料を意味している英語の“Perfume”の語源は、ラテン語の“Per fumum”です。「through smoke(煙を通して)」という意味であり、香料の起源は煙とともに用いられていたことがうかがえます。
古代エジプト後期、紀元前1世紀のプトレマイオス朝を治めた絶世の美女クレオパトラは香料に対する関心も高く、「キフィ」の香りをつけ、着飾り、圧倒的な魅力を持つ女性として伝説になっています。「キフィ」は主にワインをベースにオリバナム、ミルラ、サフラン、カシア、干しぶどう、ハチミツ、スパイクナルドなどが用いられていたようです。
古代ギリシャ時代には、医学の父とも呼ばれるヒポクラテスが医学の礎を築き、芳香植物を生のままや乾燥させたものを焚いて治療のひとつにしていました。
ギリシャからローマに香料が伝わると、ローズウォーターなどの香りが多く使われるようになり、浴室や寝室にまで香りを用いるようになりました。
ローマ風呂で1日3回の入浴を楽しんだ貴族たちは、多量の香油を体に塗ったり、部屋や衣類に固体や粉末の香料を使用しました。香料への欲求は交易ルートをアラビア半島、インド、中国(シルクロード)にまで拡大させ、香料はガラス容器を使用したので、ガラス工芸技術の発展にも貢献しました。
南フランスの丘陵にグラースという町があります。
現在、世界の香料の中心地ともいうべきこの町は12世紀末頃には皮革工業が盛んで、16世紀頃から製油工場が多くでき始めます。これは香料がなめし皮の臭いを消すのに役立つため、この町で大いにもてはやされたからです。
その後、マルセーユなどで盛んになった石鹸に香料が使用されるようになり(マルセーユ石鹸)、グラースは香料の中心地として発展していきました。
グラース地方の温暖な気候・風土はジャスミン、ローズ、ラベンダー、オレンジフラワーなど、多くの香料植物の栽培に適しており、この町は「香料のメッカ」とまで呼ばれるようになったのです。